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安全キャビネットとは?クリーンベンチやドラフトとの違いも解説!

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研究や製造の現場で、微生物や有害物質を安全に取り扱うことは、研究者の安全確保、製品品質の維持、そして環境保護において極めて重要です。
特にバイオハザード対策が求められる現場では、「安全キャビネット」の適切な選定と運用が不可欠となります。

しかし、クリーンベンチやドラフトチャンバーなど、似たような装置との違いがわかりにくく、どれを選べば良いか迷う方も少なくありません。
誤った装置の選定は、安全性リスクの増大や、不必要なコスト発生にもつながりかねません。

そこで、本記事では、「安全キャビネット」の基本的な定義から、そのクラス分類ごとの特徴、そしてクリーンベンチやドラフトチャンバーとの決定的な違いまでを解説します。

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安全キャビネットとは?

安全キャビネット(Biological Safety Cabinet: BSC)は、微生物や特定の有害物質を扱う際に、作業者、試料、そして環境を保護するための閉鎖型の作業空間を提供する装置です。

主にバイオハザード対策を目的として設計されており、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を通して清浄な空気を供給・排気することで、安全な作業環境を維持します。

安全キャビネットの基本的な機能と目的

安全キャビネットの主な機能と目的は以下の3点です。

作業者の保護

キャビネット内で取り扱う微生物や有害物質が外部に漏洩するのを防ぎ、作業者が吸入したり接触したりするリスクを低減します。

試料の保護

外部からの汚染物質がキャビネット内に侵入するのを防ぎ、取り扱う試料や製品の無菌性を保ちます。

環境の保護

キャビネット内の汚染された空気をHEPAフィルターでろ過し、清浄な空気として外部に排気することで、周囲の環境汚染を防ぎます。

これらの保護機能は、キャビネット内の気流制御とHEPAフィルターによって実現されます。

バイオハザード対策における安全キャビネットの位置づけ

安全キャビネットは、バイオセーフティレベル(BSL)に応じた封じ込め対策の主要な設備として位置づけられています。

BSLは、取り扱う微生物の危険度に応じて定められる安全管理の基準であり、BSL-1からBSL-4まであります。

  • BSL-1:健康な成人に対して疾患を引き起こすリスクが低い微生物。特別な封じ込め設備は通常不要。
  • BSL-2:中程度の危険性を持つ微生物。安全キャビネットの使用が推奨される場合がある。
  • BSL-3:重篤な疾患や死に至る可能性のある微生物。安全キャビネットの使用が必須。
  • BSL-4:非常に危険で、有効な治療法がない微生物。最高レベルの封じ込め設備であるクラスIII安全キャビネットが必須。

このように、安全キャビネットは、バイオハザード対策において、微生物の封じ込めを担う「一次封じ込め設備」として極めて重要な役割を果たします。

安全キャビネットのクラス分類とそれぞれの特徴

安全キャビネットは、その保護性能と構造、気流制御方式によって大きく3つのクラスに分類されます。

それぞれのクラスにはさらにタイプが細分化されており、取り扱う微生物の危険度や作業内容に応じて適切なタイプを選択する必要があります。

クラスI安全キャビネット

クラスI安全キャビネットは、作業者と環境を保護することを目的としています。

キャビネット前面の開口部から室内の空気を吸い込み、HEPAフィルターを通して排気することで、キャビネット内の汚染物質が外部に漏れるのを防ぎます。

ただし、キャビネット内には清浄な空気が供給されないため、試料を外部からの汚染から保護する機能は限定的です。

主に、低リスクの微生物や、発がん性物質などの揮発性化学物質を扱う場合に用いられることがあります。

クラスII安全キャビネット

クラスII安全キャビネットは、作業者、試料、環境の三者を同時に保護することを目的とした最も広く普及しているタイプです。

前面開口部からの吸い込み気流(インフロー)と、作業面に垂直に吹き降ろされる清浄な気流(ダウンフロー)を組み合わせることで、汚染物質の外部漏洩と試料の汚染を防ぎます。
排気はHEPAフィルターを通して行われます。

クラスIIは、排気方式や内部循環の割合によってさらに4つのタイプに分類されます。

タイプA1

キャビネット内の空気の約70%がHEPAフィルターを通して内部循環し、残りの30%がHEPAフィルターを通して外部に排気されます。

排気ダクトへの接続は可能ですが、キャビネット内のファンで排気するため、排気ダクトが陰圧になるような接続はできません。

少量の揮発性化学物質を扱うことも可能ですが、推奨されません。

タイプA2

タイプA1と同様に、空気の約70%が内部循環し、30%が外部に排気されます。

タイプA1との主な違いは、排気ダクトを接続し、排気ファンを外部に設置することで、ダクト内を陰圧に保つことができる点です。
これにより、排気ダクトの漏洩リスクが低減されます。揮発性化学物質の取り扱いには注意が必要ですが、タイプA1よりは適しています。

タイプB1

排気される空気の約60%が外部に直接排気され、約40%が内部循環します。

外部排気される空気は、専用の排気システム(排気ダクトとファン)に接続され、必ずHEPAフィルターを通して排気されます。

揮発性化学物質や放射性物質を少量扱う場合に適しています。

タイプB2

キャビネット内の空気が全て(100%)HEPAフィルターを通して外部に排気され、内部循環は行われません。

これにより、揮発性化学物質や放射性物質、または微量でも内部循環させたくない物質を扱う場合に、最も高い安全性を確保できます。

ただし、専用の排気設備が必要となり、設置コストや運用コストが高くなる傾向があります。

クラスIII安全キャビネット

クラスIII安全キャビネットは、最高レベルのバイオハザード封じ込めを必要とする微生物(BSL-4)を扱うために設計された、完全密閉型の装置です。

キャビネット本体はガスケットで密閉され、作業はグローブポートを介して行われます。
空気は二重または三重のHEPAフィルターを通して排気され、給気もHEPAフィルターを通して行われます。

内部は常に陰圧に保たれ、作業者、試料、環境に対して最高の保護を提供します。

クリーンベンチやドラフトとの違い

安全キャビネットと混同されやすい装置として、クリーンベンチやドラフトチャンバー(ヒュームフード)があります。

これらはそれぞれ異なる目的と機能を持っており、誤った選定は重大なリスクにつながります。

安全キャビネットとクリーンベンチの違い

クリーンベンチ(Clean Bench)は、作業空間を清浄な状態に保ち、試料を外部からの汚染から保護することを主な目的とした装置です。

安全キャビネットとは保護対象と気流制御方式が大きく異なります。

保護対象の違い(作業者・試料・環境)

安全キャビネット

作業者、試料、環境の三者を保護します。特に、キャビネット内の汚染物質が外部に漏れるのを防ぎます。

クリーンベンチ

試料のみを保護します。HEPAフィルターを通した清浄な空気を作業面に供給することで、外部からの粒子状物質による試料汚染を防ぎます。

しかし、キャビネット内の空気を外部に吹き出すため、作業者や周囲の環境を保護する機能はありません。
微生物や有害物質を扱う作業には不向きです。

気流制御方式の違い

安全キャビネット

前面開口部から室内の空気を吸い込む「インフロー」と、作業面に吹き降ろす「ダウンフロー」を組み合わせ、キャビネット内を陰圧に保ちます。

これにより、汚染物質の外部漏洩を防ぎます。

クリーンベンチ

HEPAフィルターを通した清浄な空気を、作業面に対して水平または垂直に「層流」で吹き付けます。

これにより、作業空間を陽圧に保ち、外部からの汚染粒子の侵入を防ぎます。

安全キャビネットとドラフトチャンバー(ヒュームフード)の違い

ドラフトチャンバー(Fume Hood、ヒュームフードとも呼ばれる)は、主に化学物質の蒸気やガスから作業者を保護することを目的とした装置です。

微生物を扱う安全キャビネットとは、その用途と排気システムが大きく異なります。

用途と保護対象の比較

安全キャビネット

微生物、ウイルス、細胞培養などのバイオハザード物質を対象とし、作業者、試料、環境を保護します。
排気にはHEPAフィルターが必須です。

ドラフトチャンバー

揮発性の有機溶剤、酸、アルカリなどの化学物質の蒸気、有害ガス、粉塵などを対象とし、作業者を保護します。
キャビネット内の空気を強力に吸引し、外部に排気することで、有害物質の吸入を防ぎます。
排気には通常HEPAフィルターは使用されず、活性炭フィルターが用いられることはありますが、微生物の封じ込めには不向きです。

排気システムの原理と安全性

安全キャビネット

HEPAフィルターを通して空気中の微生物や粒子を捕集し、清浄な空気を排気します。内部の陰圧とエアカーテンによって、汚染物質の外部漏洩を防ぎます。

ドラフトチャンバー

キャビネット内の空気を直接、または活性炭フィルターなどを介して外部に排気します。HEPAフィルターがないため、微生物を扱うと、ろ過されずに外部環境に放出されてしまうリスクがあります。

安全キャビネットに関するFAQ

安全キャビネットに関してよくいただくご質問にお答えします。

Q1.どのクラスの安全キャビネットを選べば良いですか?

A1.取り扱う微生物のバイオセーフティレベル(BSL)と、作業内容(揮発性化学物質の使用有無など)によって決定します。

BSL-2レベルの微生物を扱う場合はクラスII、特に揮発性化学物質を多用する場合はクラスIIタイプB2、最高レベルの危険度(BSL-4)の場合はクラスIIIが必須です。

専門業者にご相談いただくことを強くお勧めします。

Q2.安全キャビネットの設置にはどのような準備が必要ですか?

A2.設置場所の確保(十分なスペースと天井高)、電源(専用回路が必要な場合あり)、排気ダクトの設置(特にクラスIIタイプBやクラスIIIの場合)、適切な換気設備、そして定期的なメンテナンスのためのアクセススペースが必要です。

事前に設置業者と詳細な打ち合わせを行うことが重要です。

Q3.安全キャビネットの定期的なメンテナンスは必要ですか?

A3.はい、安全性を維持するために定期的なメンテナンスは不可欠です。HEPAフィルターの交換、気流の測定・調整、漏洩検査、滅菌処理などが含まれます。
通常、年に1回以上の専門業者による点検・校正が推奨されます。

これにより、装置の性能を維持し、作業者の安全を確保できます。

Q4.安全キャビネットの導入費用はどのくらいかかりますか?

A4.クラスやタイプ、メーカー、オプション機能によって大きく異なります。
また、本体価格だけでなく、設置工事費、排気設備工事費、定期メンテナンス費用なども考慮する必要があります。

長期的な運用コストも含めて、複数のメーカーや販売店から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。

まとめ

安全キャビネットは、微生物や有害物質を安全に取り扱う上で不可欠な一次封じ込め設備です。
作業者、試料、環境の三者を保護するという点で、クリーンベンチやドラフトチャンバーとは明確に区別されます。

特に重要なのは、取り扱う物質の危険度(バイオセーフティレベル)や作業内容に応じて、適切なクラス(クラスI、II、III)およびタイプ(クラスIIのA1, A2, B1, B2)の安全キャビネットを選定することです。
誤った選定は、安全性リスクの増大や、不必要なコスト発生、さらには研究の信頼性低下にもつながりかねません。

選定に迷われた際は、専門知識を持つメーカーや販売店にご相談ください。

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