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ドラフトチャンバーとは?安全な研究・製造環境を守るための基礎知識

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「研究室や製造現場の安全を確保したいが、最適なドラフトチャンバーの選び方や運用方法がわからない…」
そんなお悩みをお持ちの研究室長や工場長の皆様へ。

有害なガスや粒子が発生する実験・作業において、作業者の安全と環境保護は最重要課題です。その中心的な役割を担うのが「ドラフトチャンバー」ですが、その種類や機能、適切な選び方、そして忘れてはならない法規制まで、網羅的に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか?

そこで本記事では、「ドラフトチャンバーとは何か?」という基本的な定義から、知っておくべき法規制、クリーンベンチや安全キャビネットとの違いまでを解説します。

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ドラフトチャンバーとは?

ドラフトチャンバーとは、実験や作業中に発生する有害なガス、蒸気、粉じんなどを外部に排出することで、作業者の安全と室内環境を保護するための局所排気装置です。
主に化学実験室、研究施設、製造現場などで使用されます。

箱型の構造をしており、内部で発生した有害物質を前面の開口部から吸い込み、排気ファンを通じて外部へ排出するか、フィルターで処理してから排出します。
これにより、作業者が有害物質を吸い込んだり、室内空間に拡散したりするのを防ぎます。

なぜドラフトチャンバーが必要なのか?

ドラフトチャンバーが研究室や製造現場に不可欠な理由は、主に以下の2点に集約されます。

有害物質から保護するため

化学物質の中には、吸入すると人体に有害な影響を及ぼすものが数多く存在します。
たとえば、特定化学物質、有機溶剤、酸、アルカリ、あるいは微細な粉じんなどが挙げられます。
ドラフトチャンバーは、これらの有害物質が作業者の呼吸域に入るのを防ぎ、健康被害や中毒事故を未然に防止します。
これは、労働安全衛生法などの各種法規制によっても使用が義務付けられている、重要な安全設備です。

環境汚染防止のため

有害物質が室内に拡散すると、その空間で作業する全ての人に影響を及ぼすだけでなく、精密機器の故障や腐食を引き起こす可能性もあります。
また、建物の外部に排出される有害物質は、大気汚染の原因となることもあります。

ドラフトチャンバーは、有害物質を効率的に捕捉し、適切に処理することで、室内環境の清浄を保ち、周辺環境への悪影響を最小限に抑える役割も担っています。

ドラフトチャンバーの原理と仕組み

ドラフトチャンバーは、その構造と排気システムによって、有害物質を安全に管理します。

陰圧による有害物質漏出の抑制メカニズム

ドラフトチャンバー内部は、排気ファンが常に空気を吸い込むことで、外部よりも低い圧(陰圧)に保たれています。
これにより、チャンバー内部で発生した有害なガスや蒸気は、室内側へと逆流することなく、排気経路へと確実に吸い込まれます。
前面のスライド扉(サッシ)を開けて作業を行う際も、この陰圧が維持されることで、有害物質が外部に漏れるのを防ぎます。

排気に含まれる有害物質の除去方法

排出される空気中に有害物質が含まれる場合は、その種類に応じて適切な処理が行われます。

  • フィルター…微粒子や粉じんを除去するHEPAフィルターやULPAフィルター、特定のガスを吸着する活性炭フィルターなどが使用されます。
  • スクラバー…水や化学溶液を用いて、ガス状の有害物質を吸収・中和する装置が排気経路に組み込まれることもあります。特に酸やアルカリ性のガスを扱う場合に有効です。

これらの処理システムによって、排出される空気が環境基準を満たすよう浄化されます。

性能を維持するための運用上の注意点

ドラフトチャンバーの性能を最大限に引き出すためには、いくつかの運用上の注意点があります。

  • 適切な風量維持…排気風量が不足すると、有害物質が漏洩するリスクが高まります。定期的な点検と風量測定が不可欠です。
  • 開口部の管理…サッシを必要以上に開けすぎると、排気効率が低下し、有害物質が漏洩しやすくなります。常に推奨される開口高さを守りましょう。
  • チャンバー内部の整理…チャンバー内に物を置きすぎると、空気の流れが乱れ、排気効率が低下します。必要なもの以外は置かないようにしましょう。
  • 定期的な清掃とメンテナンス…フィルターの交換やダクトの清掃など、定期的なメンテナンスを怠らないことが、安全な運用には不可欠です。

ドラフトチャンバーの種類と特徴

ドラフトチャンバーには、排気風量の制御方式や設置タイプによっていくつかの種類があります。

排気風量の制御方式による分類

定風量タイプ(CAV方式)

Constant Air Volume(CAV)方式は、常に一定の排気風量で運転するタイプです。
サッシの開口高さに関わらず排気量が一定のため、換気回数を一定に保ちやすいという特徴があります。
シンプルな構造で初期費用を抑えやすいですが、サッシの開口が狭い場合でも同じ風量を排出するため、省エネルギー性には劣る場合があります。

変風量タイプ(VAV方式)

Variable Air Volume(VAV)方式は、サッシの開口高さの変化に合わせて排気風量を自動で調整するタイプです。
サッシを閉めると排気量が減り、開けると増えるため、不要な排気を抑えることができ、省エネルギー効果が高いのが大きな特徴です。
初期費用はCAV方式より高くなる傾向がありますが、ランニングコストを抑えたい場合や、複数のドラフトチャンバーを設置する大規模施設に適しています。

低風量タイプ(省エネタイプ)

近年では、環境負荷低減やランニングコスト削減のため、より低い風量でも安全性を確保できる低風量タイプも開発されています。
独自の設計やエアカーテン技術などを採用することで、必要な排気性能を保ちつつ、消費電力を大幅に削減できます。

設置タイプによる分類

床置きタイプ

最も一般的なドラフトチャンバーで、床に直接設置されます。
内部に大型の実験装置を設置したり、立ったまま作業したりするのに適しています。
排気効率が高く、多様な実験に対応できます。

卓上タイプ

実験台などの上に置いて使用する小型のドラフトチャンバーです。
限られたスペースでの作業や、特定の小型装置からの有害物質排出を目的とする場合に利用されます。手軽に設置できる点がメリットです。

ウォークインタイプ

大型の装置や、内部に入って作業する必要がある場合に用いられる、部屋型のドラフトチャンバーです。
車両や大型部品の排気処理など、特殊な用途で利用されます。

混同しやすい設備との違い

研究室や工場には、ドラフトチャンバー以外にも排気や清浄に関わる設備がありますが、それぞれ目的と用途が異なります。

クリーンベンチとの違い

クリーンベンチは、ドラフトチャンバーとは全く逆の目的で使用されます。
作業域に清浄な空気(HEPAフィルターを通した空気)を送り込むことで、外部からの塵や微生物の侵入を防ぎ、無菌環境やクリーンな作業空間を維持します。
細胞培養、遺伝子操作、精密機器の組み立てなど、クリーンな環境が必要な作業に用いられます。有害物質を排気する機能はありません。

安全キャビネットとの違い

安全キャビネット(生物学的安全キャビネット:BSC)は、ドラフトチャンバーとクリーンベンチの両方の要素を併せ持ちます。
病原体などのバイオハザード物質を取り扱う際に、作業者、環境、そしてサンプルを保護するために使用されます。
内部の空気をHEPAフィルターでろ過し、排気もフィルター処理を行うことで、危険な微生物の飛散を防ぎます。
クラスI、II、IIIなどの分類があり、取り扱う病原体の危険度によって適切なクラスを選定する必要があります。

まとめ

ドラフトチャンバーは、有害物質から作業者の健康を守り、周辺環境への汚染を防ぐための重要な設備です。
中小企業の工場長や大学・大学院の研究室長の方々にとって、これらの基礎知識を正確に理解することは、適切な設備選定と安全な運用に直結します。

貴社の研究・製造環境に最適なドラフトチャンバーを選定し、安全で効率的な作業環境の構築にお役立ていただければ幸いです。

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